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『きばる』

【醍醐寺 五重塔(京都市伏見区)】

 これは励まし、または意気込みを表すのに使える「京ことば(京都弁)」です。
 辞書に記載されている言葉ですが『関西弁』として広く認識されています。

きばる(気張る)

【意味】頑張る
※『奮発する』『力む』という意味もある

アクセントは以下の通りです。(H:高音 L:低音)
※始めから高音が続くのは関西アクセントの特徴です。

HHH
きばる

【例文】
・セーダイHHHH
(精を出して頑張れ)

エライ長いことHHHHLH
(とても長い間頑張ってたね)

・残業なん?HHHHH
(残業なの?頑張れよ。)

・セーダイ、HHHHHHHHHHL
(精一杯、頑張らせてもらいますわ。)

 二つ目の例文のフレーズを丁寧に言うと「きばっといやしたな」となり、けっこう古風なサウンドに変わります。

 ちなみに、『気張る』『気張ります』という言い方はあまりされないようです。

 むしろ『頑張る』『頑張ります』というほうがよく聞きます。

 ですが、例文にある通り『気張らしてもらいます』はけっこう使われます。

 

ほな、おおきに。

Kikujiro

【関連記事】京ことば:『セーダイ』を見る

【本記事の参考文献】
「もっと!もっと!京ことば」 <春><秋><冬>
「京ことばの辞典」大原穣子 研究社
「新版  京都・観光文化検定試験 公式テキストブック」  淡交社

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京都弁の助動詞『はる』

【京都御苑(京都市上京区)】

【2023年5月14日:更新】

 京都弁の特徴の一つとして、日常会話で『はる』がよく使われます。

 『はる』は軽い尊敬の意味が含まれる助動詞です。

 京都では『春』の時分だけでなく、一年中『はる』が聞こえてきます。

 京都周辺の関西地域、兵庫、大阪、滋賀、奈良でも『はる』が使われます。

 【例】表現の丁寧度
   (右にいくほど丁寧)

・行く < 行かはる < 行かれる
・来る < 来はる  < 来られる

 助動詞「はる」の活用形は下表の通りです。
 用例として「する」「行く」「言う」の活用形を併記します。

 ※地域差・個人差があるため、皆がこのように話すわけではありません。
 例えば、「しゃはる」は「しはる」という話し方もあります。

「はる」の活用する行く言う
「はる/~される」しゃはる行かはる言わはる
「はりました/~されました」しゃはりました行かはりました言わはりました
「はった/~された」しゃはった行かはった言わはった
「はんねん/~されるんだ」しゃはんねん行かはんねん言わはんねん
「はらへん/~されない」しゃはらへん行かはらへん言わはらへん
「はって/~されて」しゃはって行かはって言わはって

 

 会話に「はる」を使った例文を(1)~(10)までご紹介します。
 ※()内は標準的な話し方

(1)
どこ行かはるんですか?
- へぇ、ちょっとそこまで。
(どこへ行かれるのですか?)
(- はい、ちょっと近くまで。)

(2)
奥さんの着てはる着物、よう うつらはるわ。
- いぃえ~、そんな事おへんて。
(奥さんの着てらっしゃる着物、よく似合っていますね。)
(- いえいえ、そんな事ないですよ。)

(3)
なぁおばちゃん!おねえちゃんら みな 帰って来たはる?
- そうや。みんな帰って来て、やかましこっちゃ。
(なぁおばちゃん!おねえちゃんたち みんな 帰って来てる?)
(- そうよ。みんな帰って来て、さわがしいのよ。)

(4)
気持ちよう お酒回ったはるなぁ。
- ちょっとそこらで飲んでてん
(大分酔っているみたいですねぇ。)
(- ちょっとその辺で飲んでたんだよ。)

(5)
祇園祭ゆーたら、やっぱりハモやろ。
- へぇ、そう言わはるやろなぁ思いましたわ。
(祇園祭と言えば、やっぱりハモ(ハモ)だろう。)
(- はい、そうおっしゃると思いましたよ。)

(6)
昨日飲み過ぎてもうて、しんどいわ。今日、仕事休んでエエかな?
- いや、何言うてはるんですか!
(昨日飲み過ぎてしまって辛いよ。今日の仕事は休んでいいだろうか?)
(- いや、何を言ってらっしゃるんですか!)

(7)
今日はメッチャ晴れたなぁ。
- ホンマによかったなぁ。「時代祭は晴れる」て、おばあちゃん言うたはったし。
(今日はとてもよく晴れたね。)
(- 本当に良かったね。「時代祭は晴れる」って、おばあちゃんが言ってたから。)

(8)
これ、おばあちゃんがこーてきてくれはってん
- なんか、ちょっともっさいなぁ。
(これ、おばあちゃんが買ってきてくれたんだよ。)
(- なんか、ちょっとあか抜けないね。)

(9)
知らんに帰らはったわ。
いてはりましたんやろなぁ。
(知らないうちに帰られましたわ。)
(-急いでいらっしゃったのでしょうね。)

(10)
A:なんや?あのかさかぶった人ら、ぼんさんか?
B:あぁ、『おーさん』やなぁ。あないして「おーっ」ゆーて、修行して回ったはんのや
A:へ~、そうなんや。せやけど、こないぎょーさん、どっからきはってんやろなぁ?
B:さぁ、どやろ。おばあちゃんに聞いてみんとわからへんわ。
(A:なんだ?あのかさかぶった人たち、坊さんか?)
(B:あぁ、『おーさん』だね。あんなふうに「おーっ」って言って、修行して回っているんだよ。)
(A:へ~、そうなんだ。だけど、これだけたくさんの人、どこから来たんだろうねぇ?)
(B:さぁ、どうだろう。おばあちゃんに聞いてみないとわからないよ。)

 最後に大阪人の御方が語る「はる」のニュアンスをご紹介します。
“京都弁の「はる」には軽い尊敬の意味が含まれる”と説明しましたが、それは大阪弁でも同様です。

【参考動画】「はる」のニュアンス
(出典:大阪おっちゃんねる)

 

以上、何かのお役に立てば幸いです。

ほな、おおきに。
(失礼します。)

Kikujiro

【関連記事】関西弁『~てん』を見る

【本記事の参考文献】
「もっと!もっと!京ことば」 <春><夏><秋><冬>

 

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