【京都御苑(京都市上京区)】
【2023年5月14日:更新】
京都弁の特徴の一つとして、日常会話で『はる』がよく使われます。
『はる』は軽い尊敬の意味が含まれる助動詞です。
京都では『春』の時分だけでなく、一年中『はる』が聞こえてきます。
京都周辺の関西地域、兵庫、大阪、滋賀、奈良でも『はる』が使われます。
【例】表現の丁寧度
(右にいくほど丁寧)
・行く < 行かはる < 行かれる
・来る < 来はる < 来られる
助動詞「はる」の活用形は下表の通りです。
用例として「する」「行く」「言う」の活用形を併記します。
※地域差・個人差があるため、皆がこのように話すわけではありません。
例えば、「しゃはる」は「しはる」という話し方もあります。
「はる」の活用 | する | 行く | 言う |
「はる/~される」 | しゃはる | 行かはる | 言わはる |
「はりました/~されました」 | しゃはりました | 行かはりました | 言わはりました |
「はった/~された」 | しゃはった | 行かはった | 言わはった |
「はんねん/~されるんだ」 | しゃはんねん | 行かはんねん | 言わはんねん |
「はらへん/~されない」 | しゃはらへん | 行かはらへん | 言わはらへん |
「はって/~されて」 | しゃはって | 行かはって | 言わはって |
会話に「はる」を使った例文を(1)~(10)までご紹介します。
※()内は標準的な話し方
(1)
どこ行かはるんですか?
- へぇ、ちょっとそこまで。
(どこへ行かれるのですか?)
(- はい、ちょっと近くまで。)
(2)
奥さんの着てはる着物、よう うつらはるわ。
- いぃえ~、そんな事おへんて。
(奥さんの着てらっしゃる着物、よく似合っていますね。)
(- いえいえ、そんな事ないですよ。)
(3)
なぁおばちゃん!おねえちゃんら みな 帰って来たはる?
- そうや。みんな帰って来て、やかましこっちゃ。
(なぁおばちゃん!おねえちゃんたち みんな 帰って来てる?)
(- そうよ。みんな帰って来て、さわがしいのよ。)
(4)
気持ちよう お酒回ったはるなぁ。
- ちょっとそこらで飲んでてん。
(大分酔っているみたいですねぇ。)
(- ちょっとその辺で飲んでたんだよ。)
(5)
祇園祭ゆーたら、やっぱりハモやろ。
- へぇ、そう言わはるやろなぁ思いましたわ。
(祇園祭と言えば、やっぱりハモ(鱧)だろう。)
(- はい、そうおっしゃると思いましたよ。)
(6)
昨日飲み過ぎてもうて、しんどいわ。今日、仕事休んでエエかな?
- いや、何言うてはるんですか!
(昨日飲み過ぎてしまって辛いよ。今日の仕事は休んでいいだろうか?)
(- いや、何を言ってらっしゃるんですか!)
(7)
今日はメッチャ晴れたなぁ。
- ホンマによかったなぁ。「時代祭は晴れる」て、おばあちゃん言うたはったし。
(今日はとてもよく晴れたね。)
(- 本当に良かったね。「時代祭は晴れる」って、おばあちゃんが言ってたから。)
(8)
これ、おばあちゃんがこーてきてくれはってん。
- なんか、ちょっともっさいなぁ。
(これ、おばあちゃんが買ってきてくれたんだよ。)
(- なんか、ちょっとあか抜けないね。)
(9)
知らん間に帰らはったわ。
-急いてはりましたんやろなぁ。
(知らないうちに帰られましたわ。)
(-急いでいらっしゃったのでしょうね。)
(10)
A:なんや?あの笠かぶった人ら、ぼんさんか?
B:あぁ、『おーさん』やなぁ。あないして「おーっ」ゆーて、修行して回ったはんのや
A:へ~、そうなんや。せやけど、こないぎょーさん、どっからきはってんやろなぁ?
B:さぁ、どやろ。おばあちゃんに聞いてみんとわからへんわ。
(A:なんだ?あの笠かぶった人たち、坊さんか?)
(B:あぁ、『おーさん』だね。あんなふうに「おーっ」って言って、修行して回っているんだよ。)
(A:へ~、そうなんだ。だけど、これだけたくさんの人、どこから来たんだろうねぇ?)
(B:さぁ、どうだろう。おばあちゃんに聞いてみないとわからないよ。)
最後に大阪人の御方が語る「はる」のニュアンスをご紹介します。
“京都弁の「はる」には軽い尊敬の意味が含まれる”と説明しましたが、それは大阪弁でも同様です。
【参考動画】「はる」のニュアンス
(出典:大阪おっちゃんねる)
以上、何かのお役に立てば幸いです。
ほな、おおきに。
(失礼します。)
Kikujiro
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【本記事の参考文献】
「もっと!もっと!京ことば」 <春><夏><秋><冬>
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